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投資の前に置いておくお金 ── 生活防衛資金とは何か

📖 この記事の登場人物

朝陽

朝陽(あさひ)

お金を学び始めたばかりの大学生。「なんで?」と素朴な疑問をぶつける聞き手役です。

みのり先生

みのり先生

お金の教育に携わる解説役。難しい言葉も、本質をそのまま丁寧に噛み砕いて教えます。

お金を育てたい。その気持ちが強いほど、手元のお金をぜんぶ投資に回したくなります。

でも、その前にやっておきたいことがあります。暮らしを守るためのお金を、投資とは別に取り分けておくことです。

これを生活防衛資金といいます。地味に見えて、続けられる人ほど必ず持っています。今日はその正体を、はっきりさせましょう!

先生、お金を増やしたいなら、貯金もぜんぶ投資に回したほうが早いよね?

その気持ち、よく分かります! でも、ぜんぶ回すのは、じつは続けにくくなる選び方なんです。

えっ、増やしたいのに? なんで続けにくくなるの?

急にお金が必要になった時、投資を売って用意するしかなくなるからです。値下がりしている時に売ると、損が出やすいんですよ。

あー…たしかに、使いたい時に減ってたら最悪だ。

そうならないための備えが、生活防衛資金です。今日は、次の4つの問いに答えていきますね!

今日は、次の4つの問いに、順番に答えていきます。

  1. そもそも生活防衛資金って何? ── 守りのお金の正体
  2. いくら貯めればいいの? ── 生活費の3〜6か月分という目安
  3. なぜ投資より先に必要なの? ── 取り崩しと心の余裕
  4. どこに置けばいいの? ── すぐ使える別口座

4つの問いかぁ。これが分かれば、安心して始められそう! よし、お願いします!

そもそも生活防衛資金って何? 増やすお金とは「分けて」持つ

最初の問いは、生活防衛資金とは何か、です。お金の分け方から見ていきましょう。

お金は、目的で3つに分けると整理できます。近い将来に使う予定のお金、もしもの時に暮らしを守る生活防衛資金、すぐには使わない育てるお金。生活防衛資金は、この真ん中にあたります。

図1 お金は3つに分ける。今日の主役は真ん中の「守り」

目的でお金を分けると、迷いが減ります

① 使う予定のお金近い将来に使う 例 旅行・家電 置き場所 普通預金
② 生活防衛資金 守り 今日のテーマもしもの備え すぐ使える場所に置く
③ 育てるお金すぐには使わない 投資で増やす

3つを混ぜないことが、続けられる人の共通点です

生活防衛資金とは、急な出費や収入の減少に備えて、投資に回さずに取り分けておくお金です。増やすことより、いつでもすぐ使えることを優先します。

病気やけが、急な退職、家電の故障。暮らしには、予定にない出費が必ず出てきます。そんな時、すぐ使えるお金が別にあれば、あわてて投資を取り崩さずにすみます

ここで大事なのが、「分けて」持つことです。同じ口座にまとめておくと、守りのお金もつい使ってしまいます。ボーナスを生活費の口座に入れたら、気づくと残っていなかった。そんな経験はないでしょうか。お金は、名前をつけて場所を分けるだけで、手をつけにくくなります。

📖 用語生活防衛資金

急な出費や収入の減少に備えて、投資に回さずに取り分けておくお金のことです。暮らしを守るための備えで、増やすことより、いつでも使えることを優先します。

あれ、それって普通の貯金とは別なの?

いい質問です! ふつうの貯金は、旅行や買い物など使う目的があることも多いですよね。生活防衛資金は、使うあてのないお金なんです。

使わないために置いておくお金かぁ。なんだか不思議な感じ。

最初はそう感じますよね。でも、この使わないお金があるだけで、いざという時にあわてずにすむんです。お守りのようなものですよ。

たしかに、まとめてあると、ぼくはつい使っちゃうかも…。

正直でいいですね! だからこそ、「これは守りのお金」と決めて、別の場所にしておく。それだけで守りは強くなりますよ。

いくら貯めればいい? 目安は生活費の3〜6か月分

2つ目の問いは、いくら貯めればいいか、です。一つの目安は、毎月の生活費の3〜6か月分です。

金額は、次の3ステップで考えると出しやすくなります。まず、家賃や通信費などの固定費を書き出します。次に、食費などを足して、1か月の生活費を出します。最後に、それを何か月分そろえるかを決めます。

収入が安定している会社員は3〜6か月分が目安です。収入が月によって変わる自営業やフリーランスは、6〜12か月分と多めに見ておくと安心です。収入が止まった時に、立て直すまでの時間が読みにくいからです。

図2 目安は生活費の3〜6か月分。収入が不安定なら多めに

会社員3〜6か月
自営・フリー6〜12か月
036912か月
たとえば月20万円の生活費なら、3か月分で60万円、6か月分で120万円。数字は一例で、必要額は人により変わります

📖 用語固定費

毎月決まって出ていく支出のことです。家賃や通信費、光熱費、保険料などが当てはまります。収入が減っても、すぐには下げにくい支出です。生活費の何か月分を備えるか考えるとき、まずこの固定費を把握すると目安が立てやすくなります。

家族構成でも変わります。一人暮らしなら自分の生活費だけですが、家族がいると固定費が大きくなりがちです。守る対象が増えるほど、必要な額も大きくなると考えてください。

貯め方は、先取りが続きます。給料が入ったら、使う前に決めた額を別の口座へ動かす。残ったら貯める、では、なかなか貯まりません。

へえ、結構な金額になるんだね。一気に貯めるのは大変そう…。

一度にそろえる必要はありませんよ! 毎月少しずつ、別の口座へ移していけば大丈夫です。まずは1か月分からで十分です。

なるほど、ちょっとずつでいいんだ。あれ、でも、たくさんあるほど安心なんじゃないの?

鋭いですね! じつは、多すぎるのも考えものなんです。使わないお金を増やしすぎると、育てるお金が減ってしまいます。守りは厚すぎても、もったいない。目安の範囲でそろえるのがちょうどいいんですよ。

じゃあ、全部そろえてから投資を始めたほうがいいの?

そこは順番に縛られなくて大丈夫です。少額なら、守りを少しずつ厚くしながら、育てるお金も並行で始めて構いません。大事なのは順番より、守りを欠かさないことなんです。

なぜ投資より先に必要? 守りがあるほど、育てる方を長く続けられる

3つ目の問いは、なぜ育てる前にこの備えがいるのか、です。理由は2つあります。

1つ目は、急な出費の時に投資を取り崩さずにすむことです。たとえば、けがで急に10万円が必要になったとします。守りのお金がなければ、投資を売って用意するしかありません。値下がりしている時に売ると、損が出やすくなります。守りのお金があれば、その場面で売らずにすみます。

しかも、値下がり中に売ると、損はそこで終わりません。売ってしまえば、その後に値を戻しても、もう手元にありません。将来育つはずだった分まで、いっしょに手放すことになります。

2つ目は、心の余裕です。手元に備えがあると、増えない月が来ても落ち着いていられます。あわてて手放さずに続けられる。守りの土台がある人ほど、育てる方を長く続けられます

たとえば、急に収入が止まったとします。守りのお金が3か月分あれば、その間は暮らしを保てます。あわてて投資を売らずにすみ、立て直す時間も作れます。この「時間を作る」はたらきこそ、生活防衛資金のいちばんの価値です。

図3 土台が厚いほど、上の投資を長く続けられる

余裕・挑戦のお金
育てるお金 投資
生活防衛資金 守り = 土台

土台がぐらつくと、上から崩れます

📖 用語流動性

お金を、必要な時にすぐ引き出して使える度合いのことです。普通預金は流動性が高く、いつでも使えます。投資は、売って現金にするまで時間がかかったり、値下がり中だったりして、流動性が低めになりがちです。生活防衛資金には、流動性の高い置き場所が向いています。

あ、そっか。土台があるから、安心して続けられるんだ。

まさにそこです! 守りと育てるは、どちらが上ではありません。守りが土台にあるから、育てる方を落ち着いて続けられるんですよ。

ぼく、前に少し減っただけで不安でやめたくなったことあるな…。あれ、守りがなかったからかも。

よく気づきましたね。備えがないと、減った時の不安が、そのまま「やめたい」につながります。土台があるだけで、その不安がずっと軽くなるんです。

どこに置けばいい? すぐ引き出せる場所に、生活費とは別の口座で

最後の問いは、どこに置くか、です。生活防衛資金は、すぐ引き出せる場所に置きます。必要な時にいつでも使える形が向いています。

置き場所を、軽く比べてみましょう。普通預金は、いつでも引き出せて金額も減りません。定期預金や個人向け国債は、金利が少し高い代わりに、すぐには動かしにくいことがあります。生活防衛資金は「すぐ使えること」が最優先なので、まずは普通預金が基本です。

逆に、生活防衛資金を投資に回すのはおすすめしません。投資はいつ使うか決めにくく、使いたい時に値下がりしていることもあるからです。元本割れした状態で売れば、せっかくの備えが減ってしまいます。

📖 用語元本割れ

投資に入れたお金が、引き出すときに入れた額を下回ることです。価格が下がっている時に売ると起こりやすくなります。生活防衛資金を投資に置くと、使いたい時にこの状態になっている心配があります。だから、備えのお金は投資と分けておくのです。

もう一つ、やってはいけないのが、生活費の口座にそのまま混ぜておくことです。同じ口座にあると、つい使ってしまいます。生活防衛資金は、別の口座に分けておきましょう。

家に現金で置く「タンス預金」も、あまりおすすめしません。盗難や紛失の心配があり、つい使ってしまいやすく、物価が上がると価値が目減りするからです。銀行口座のほうが、安全に分けておけます。

📖 用語分散

お金を一か所に集めず、役割や置き場所を分けて持つことです。守りのお金と育てるお金を分けるのも、分散の一つです。片方が動いても、もう片方で支えられます。

なるほど、お金を役割で分けるんだね。

そのとおりです! 一か所にまとめないことを、分散といいます。役割で分けておくと、どちらも安心して持てますよ。

別の口座にしておけば、うっかり使っちゃうのも防げるね。

いい視点です! 見えない場所に置くだけで、守りはぐっと固くなりますよ。

よくある質問

生活防衛資金は、NISAなどで運用してもいいですか?

向きません。NISAは育てるお金のための仕組みで、値動きがあります。使いたい時に値下がりしていると、備えが減ってしまいます。生活防衛資金は、値動きのない、すぐ使える場所に置きましょう。

借金やローンがある場合は、どちらを優先すべきですか?

一般には、まず少額でも生活防衛資金を確保しつつ、利息の高い借金の返済を進める考え方があります。手元にまったく備えがないと、急な出費でまた借りることになりやすいからです。状況によって変わるため、無理のない範囲で両立を考えてください。

一人暮らしと家族では、目安は変わりますか?

変わります。守る対象が増えるほど、必要な額も大きくなりやすいです。家族がいる場合は固定費が大きくなりがちなので、多めに見ておくと安心です。まずは自分の1か月の生活費を把握することから始めましょう。

生活防衛資金は、いつから準備すればいいですか?

収入を得始めたら、早いほど安心です。金額が小さくても、別の口座に分ける習慣をつくることが第一歩です。少しずつ積み上げれば、いざという時の支えになります。

理解度チェック

Q1 生活防衛資金は、どこに置くのが向いているでしょう?

Q2 生活防衛資金の目安は、生活費のどのくらいでしょう?

まとめ

最初の4つの問い、ここで答え合わせです。

1生活防衛資金って何?
急な出費や収入減に備え、投資に回さず取り分けるお金。増やすお金とは分けて持ちます
2いくら貯める?
目安は生活費の3〜6か月分。収入が不安定なら多めに、ただし入れすぎない
3なぜ投資より先?
急な出費で投資を取り崩さずにすみ、心の余裕で長く続けられるからです
4どこに置く?
すぐ引き出せる普通預金などに、生活費とは別の口座で。投資には回しません

ポイント

✅ お金は「使う予定・守り・育てる」の3つに分ける。生活防衛資金は守り

✅ 目安は生活費の3〜6か月分。収入が不安定なら多めに、ただし入れすぎない

✅ すぐ引き出せる場所に、生活費とは別の口座で置く。投資には回さない

✅ 守りの土台があるほど、育てる方を落ち着いて長く続けられる

4つの問い、ぜんぶつながった! じゃあ、ぼくもまず1か月分を別の口座に分けてみる。そこから3か月分を目指すよ!

いい一歩です! 守りができると、育てる方も安心して続けられますよ。あせらず、少しずつでいきましょうね。

学びの次の一歩:まず1か月分を別の口座へ

今日からできるのは、大きく貯めることではありません。まず生活費の1か月分を、いつもの口座とは別の場所に移してみることです。場所を分けるだけで、使ってしまいにくくなり、もしもの時の備えになります。そこから少しずつ、3か月分に近づけていきましょう。

本記事は、お金との向き合い方を理解するための教育目的でまとめたものです。特定の金融商品やサービス、取引を推奨するものではありません。記事中の金額はすべて説明のための一例で、必要な額は人により異なります。資産運用には価格の変動などにより損失が生じる場合があり、入れた資金を下回ることもあります。実際の判断は、各種の最新の情報を確認したうえで、ご自身の責任でお願いします。

この記事の用語
  • 生活防衛資金 ── 急な出費や収入減に備え、投資に回さず取り分けるお金
  • 固定費 ── 家賃や通信費など、毎月決まって出ていく支出
  • 流動性 ── お金を、必要な時にすぐ引き出して使える度合い
  • 元本割れ ── 入れたお金が、引き出すときに入れた額を下回ること
  • 分散 ── お金を一か所に集めず、役割や置き場所を分けて持つこと

参考資料