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「勝率が高いのに損をする」意外なからくり

📖 この記事の登場人物

朝陽

朝陽(あさひ)

お金を学び始めたばかりの大学生。「なんで?」と素朴な疑問をぶつける聞き手役です。

みのり先生

みのり先生

お金の教育に携わる解説役。難しい言葉も、本質をそのまま丁寧に噛み砕いて教えます。

前回までの話

前回は、投資を数か月でやめてしまう人の多くが、負けたからではなく、減るのがこわい焦りに押されて、自分からやめている、という話を見てきました。今日はその焦りが、数字にどう出るのかを見ていきます。勝った回数が多いのに、お金が減ってしまう不思議なからくりの話です。

📖 前回の記事:投資を始めた人の多くが3か月でやめてしまう理由

先生、ぼく思ったんだけど、たくさん勝てばお金は増えるよね? 勝った回数が多いほうが、得なんでしょ?

ふつうは、そう思いますよね。でも、ここに不思議な話があります。10回やって7回勝って、3回しか負けなかったのに、お金が減ってしまった人がいるんです。

えっ、7回も勝ったのに減るの? それ、何かのまちがいじゃなくて?

まちがいではありません。これは、投資でとても大事な「数字のからくり」なんです。今日はその正体を、いっしょに解いていきましょう。

7勝3敗で減る…。どうしてそうなるのか、知りたい!

今日は、次の3つの問いを順番に見ていきます。

  1. なぜ勝つ回数が多くても、お金は減るのか ── 勝ち越しでも赤字になる
  2. 1回の負けは、何回の勝ちで取り返せるのか ── 負けが大きいほど不利
  3. 勝率と期待値、見るべきはどっち ── 回数より、1回の重さ
  4. 「7勝3敗で減る」の正体…! はい、お願いします!

    勝つ回数が多くても、お金は減る

    まず、ほんとうに勝ち越しでもお金が減るのか、ここから確かめましょう。

    10回のうち、7回勝って、3回負けた人がいます。回数だけ見れば、勝ちのほうがずっと多い。ところが、その人のお金は、増えるどころか少し減っていました。回数で勝っているのに、合計はマイナス。これが、今日の出発点です。

    中身を見てみましょう。勝ちは1回+2,000円が7回で、+14,000円。負けは1回−5,000円が3回で、−15,000円。足し合わせると、−1,000円です。次の図にまとめました。

    図1 勝ち2,000円が7回で1万4,000円、負け5,000円が3回で1万5,000円、合計はマイナス1,000円になり勝ち越しでも赤字になることを示した図

    📖 用語勝率

    やったうちで、勝った回数の割合です。7勝3敗なら勝率70%。高いほど勝つ回数は多いのですが、勝率が高い=お金が増える、とはかぎりません。1回の勝ち負けの大きさが抜けているからです。

    ほんとだ、勝った回数は多いのに、合計はマイナスになってる…。なんで?

    いいところに目をつけましたね。カギは「回数」ではなく「1回の大きさ」です。次で、その正体を見てみましょう。

    減った原因は、利益より損が大きいこと

    なぜ勝ち越したのに減ったのか。答えは回数ではなく、1回の大きさにあります。

    さっきの人は、1回の勝ちが+2,000円、1回の負けが−5,000円でした。勝ちは小さく、負けは大きい。だから、たった3回の負けが、7回ぶんの勝ちを飲み込んでしまったのです。勝つ回数が多くても、1回の負けが大きいと、合計はかんたんにマイナスへ傾きます。

    📖 用語リスクリワード

    1回の勝ちと、1回の負けの大きさの比のことです。利益が小さく損が大きいほど、この比は不利になります。比が不利なままだと、回数で勝っても合計は負けに傾きやすくなります。

    もう少し具体的に見ます。1回の負け−5,000円を取り返すには、+2,000円の勝ちが2回半も必要です。負けが大きいほど、取り返すのに要る勝ちの回数は増えていく。だから「あと何回か勝てば戻せる」と思っても、大きな負けの穴は、思ったより深いのです。

    1回の大きな負けを埋めるのに、勝ちが2回半…。回数だけ見てたら、気づけないや。

    そうなんです。そして、この1回の負けを大きくしてしまう原因に、前回の話がつながってきます。

    焦りが、1回の負けを大きくする

    ここで、前回のDay2の記事で見た焦りが、数字の上でもつながってきます。

    1回の負けを大きくしてしまう、その引き金が、まさにその焦りです。減った数字を見て焦ると、人は「早く取り返したい」と、いつもより大きく賭けてしまう。小さくコツコツ積み上げた勝ちを、焦った1回の大きな負けで、いっぺんに失う。これをコツコツドカンと言います。

    📖 用語コツコツドカン

    小さな勝ちをコツコツ積み重ねていたのに、焦りから出た1回の大きな負けで、それまでの利益がドカンと吹き飛ぶことです。利益が小さく損が大きい、不利な型の俗な呼び名で、投資の世界で昔から使われています。

    たとえば、毎回1,000円ずつコツコツ勝って、5回で5,000円ふやした人がいたとします。ところが6回目、少し減った数字を見て焦り、取り返そうと一気に10,000円を賭けてしまう。その1回で大きく負けると、積み上げた5,000円が消えるどころか、元手まで削られてしまいます。これが、コツコツドカンの正体です。

    減った数字を見たときの焦りや、取り返したい気持ちが、この「ドカン」の引き金になります。だからこそ、勝率を上げることより、焦って1回を大きくしないことのほうが、ずっと大事なのです。

    それ、ゲームで負けたときにムキになって、大勝負して大負けする…あれと同じだ。

    まさにそれです。誰にでも起こる動きなんですよ。だから、どこを見れば「増える型」か分かるのか。次で、その物差しをお見せします。

    勝率より、期待値で見る

    では、何を見れば、増える型か減る型かが分かるのか。その物差しが期待値です。

    期待値は、1回あたり平均でどれだけ手元に残るかを表します。出し方は、こうです。

    期待値 = 勝つ確率 × 勝つ額 − 負ける確率 × 負ける額

    たとえば、勝率70%で、勝ち+1,000円・負け−4,000円の型A。0.7×1,000 − 0.3×4,000 = 700 − 1,200 = −500円。勝率は高いのに、1回あたり平均で500円ずつ減っていきます。

    一方、勝率50%でも、勝ち+3,000円・負け−1,000円の型B。0.5×3,000 − 0.5×1,000 = 1,500 − 500 = +1,000円。勝率は低くても、1回あたり1,000円ずつ増える。勝率と期待値が逆になっているのが、次の図です。

    図2 勝率は型Aが70%で高いが期待値はマイナス500円、型Bは勝率50%でも期待値プラス1,000円となり、勝率と期待値が逆になることを示した図

    📖 用語期待値

    1回あたり平均で、どれだけ手元に残るかを表す数字です。プラスなら平均で増える型、マイナスなら平均で減る型。勝率の高さではなく、この期待値で見ると、増える型か減る型かが分かります。

    📖 用語試行回数

    同じやり方を繰り返した回数のことです。期待値がプラスでも、回数が少ないうちは運で上下します。回数を重ねるほど、結果は期待値に近づいていきます。長く続けることが効いてくるのは、ここにも理由があります。

    ひとつ補足すると、1回だけなら、期待値がマイナスの型Aでも、たまたま勝って増えることはあります。けれど、同じやり方を10回、100回と重ねるほど、結果は1回あたりの期待値に近づいていきます。だから、長く続けるなら、勝率の高さより、期待値がプラスの型を選ぶことが効いてきます。

    勝率が高い型Aのほうが減って、勝率が低い型Bのほうが増える…。見るところがちがったんだ!

    そのとおりです。勝った回数の多さに安心せず、1回あたり平均で残る期待値を見る。これが、増える型を選ぶ目です。

    負けを小さく保てば、お金は残る

    ここまでをまとめると、増える型と減る型を分けるのは、勝率ではなく、1回の負けの大きさでした。

    だから、ねらうことはシンプルです。勝つ回数を増やすことより、負けるときに、大きく負けない。1回の負けを小さく保てれば、たとえ何度か負けても、お金は手元に残ります。

    📖 用語最大損失

    1回で出しうる、いちばん大きな負けのことです。この最大損失を小さく抑えておくことが、コツコツドカンを防ぐ要になります。1回でどこまで負けうるかを先に決めておくほど、大きな崩れは起きにくくなります。

    とはいえ、焦りの中で、自分の手で負けを小さく抑えるのは、なかなか難しいものです。だからこそ、Day1の記事で触れたように、あらかじめ決めた仕組みに任せて、1回の大きさをはじめからおさえておく。その場の気持ちで判断しなくてよい形にしておくことが、いちばんの守りになります。

    7勝3敗で減ると聞いても、こわがらなくていい

    勝ち越しでも減ると聞くと、投資がこわく感じるかもしれません。でも、見るところが分かれば大丈夫です。勝ち負けの回数に一喜一憂せず、1回の負けを大きくしない。それだけで、数字のからくりは、もうあなたの足をすくう相手ではなくなります。

    なるほど…! 勝つ回数を増やすより、大きく負けないこと。それなら、ぼくにも気をつけられそう。

    その気づきが、いちばんの守りです。回数より、1回の重さ。そこを見られるようになれば、もう数字に振り回されませんよ。

    よくある質問

    勝率が高い方法なら、安心して大丈夫ですか?

    勝率が高くても、1回の負けが大きいと、合計ではマイナスになることがあります。勝率だけで判断せず、1回の負けの大きさと、1回あたり平均で残る期待値もあわせて見ることが大切です。

    負けを取り返そうと、大きく賭けるのはなぜよくないのですか?

    焦って1回を大きくすると、その1回の負けで、それまでの小さな勝ちがまとめて消えやすくなります。これがコツコツドカンです。取り返したいときほど、いつもの大きさに戻すことが、結果として身を守ります。

    期待値がプラスなら、必ず増えますか?

    短い回数では運で上下しますが、回数を重ねるほど、結果は期待値に近づいていきます。すぐに増えると決まっているわけではありませんが、プラスの型を、あわてず続けることが大切です。

    理解度チェック

    Q1 7回勝って3回負けたのに、お金が減ったのはなぜでしょう?

    Q2 増える型か減る型かを見分けるのに、いちばん役立つのはどれでしょう?

    まとめ

    最初の3つの問い、ここで答え合わせです。

    1なぜ勝つ回数が多くても、お金は減るのか
    1回の負けが勝ちより大きいと、回数で勝っても合計はマイナスになるからです
    21回の負けは、何回の勝ちで取り返せるのか
    負けが大きいほど、取り返すのに必要な勝ちの回数は増えます
    3勝率と期待値、見るべきはどっち
    勝率だけでは見抜けません。1回あたり平均で残る期待値を見ます

    ポイント

    ✅ 7勝3敗でも、1回の負けが大きいとお金は減る

    ✅ 増える型と減る型を分けるのは、勝率ではなく1回の負けの大きさ

    ✅ 焦って1回を大きくする「コツコツドカン」が、損を広げる

    ✅ 物差しは期待値。1回あたり平均でどれだけ残るかで見る

    ✅ 期待値がプラスでも、回数が少ないうちは運で上下する

    ✅ ねらうのは勝つ回数より、1回の負けを小さく保つこと

    そっか、ぼくが「たくさん勝てば増える」って思ってたの、回数しか見てなかったんだ。

    よく気づきましたね! 回数より、1回の重さ。そこを見られれば、もう数字のからくりにはだまされませんよ。

    勝つ回数より、大きく負けない。期待値で見る。これなら、ぼくにもできそう!

    完璧です! その見方ができれば、勝ち負けの回数に振り回されず、落ち着いて続けられますよ。

    学びの次の一歩:回数より、1回の重さ

    今日からできるのは、勝ち負けの回数を数えることではありません。「この1回で、大きく負けないか」を先に考えるくせをつけることです。回数より、1回の重さ。そこを見るようにするだけで、数字のからくりに足をすくわれにくくなります。

    本記事は、お金との向き合い方や数字の見方を理解するための教育目的でまとめたものです。特定の金融商品やサービス、取引を推奨するものではありません。記事中の数値はすべて、考え方を説明するための例であり、実際の成績を示すものではありません。資産運用には価格の変動などにより損失が生じる場合があり、入れた資金を下回ることもあります。将来の成果や、損をしないことを保証するものではありません。実際の判断は、各種の最新の情報を確認したうえで、ご自身の責任でお願いします。

    この記事の用語
    • 勝率 ── やったうちで、勝った回数の割合
    • リスクリワード ── 1回の勝ちと負けの大きさの比。利益が小さく損が大きいほど不利
    • コツコツドカン ── 小さく勝って積み上げた利益を、焦った1回の大きな負けで失うこと
    • 期待値 ── 1回あたり平均で、どれだけ手元に残るかを表す数字
    • 試行回数 ── 同じやり方を繰り返した回数。重ねるほど結果は期待値に近づく
    • 最大損失 ── 1回で出しうる、いちばん大きな負け

    参考資料