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一番増やせる人は、一番「何もしない」人

📖 この記事の登場人物

朝陽

朝陽(あさひ)

お金を学び始めたばかりの大学生。「なんで?」と素朴な疑問をぶつける聞き手役です。

みのり先生

みのり先生

お金の教育に携わる解説役。難しい言葉も、本質をそのまま丁寧に噛み砕いて教えます。

前回までの話

前回は、利息がまた利息を生む複利と、時間を味方につけるほどお金は育ちやすい、という話でした。今日は、その時間を味方につけるうえで、一番の関門になる場面の話です。それは、価格が下がった時。じつは、下がった時にどう動くかで、結果は大きく変わります。そして、一番効くのは「何もしないこと」なのです。

📖 前回の記事:利息が利息を生む複利の力

ゼロワンを持ってるんだけど、もし大きく下がったら…って考えると、ちょっと怖いな。

いい不安ですね。じつは、その「下がった時にどうするか」が、結果を大きく左右するんです。

下がったら、早めに売っておいたほうがいいんじゃないの?

それが、一番やりがちで、一番もったいない動きなんです。今日は「何もしない」ことが、なぜ一番効くのかを見ていきましょう。

何もしないのが正解…? 気になる、教えて!

今日は、次の3つの問いを順番に見ていきます。

  1. なぜ価格は、下がる日があるのか ── 下落は通常運転
  2. 下がった時に売ると、何が起きるのか ── 損が確定する
  3. 持ち続けた人は、どうなったのか ── 回復を待てた
  4. 「下がっても慌てない」の正体ですね。はい、お願いします!

    下がる日は、壊れた日ではない

    投資を続けていると、必ず価格が下がる日がやってきます。けれど、下がること自体は、なにかが壊れたサインではありません。

    価格は、上がったり下がったりを繰り返しながら動きます。これは、普通に起きることで、いわば通常運転です。下がる日があるからといって、失敗したわけでも、見通しを誤ったわけでもありません。むしろ、下がる日もあると、最初から知っておくことが、慌てないための第一歩になります。

    下がる=壊れた、じゃないんだ。

    そうです。上下するのが当たり前。問題は、下がった時にどう動くか、なんです。

    慌てて売ると、損が確定する

    下がった時、一番やりがちなのが、怖くなって慌てて売ってしまうことです。これを狼狽売りといいます。

    ここで大事なのが、売る前と売った後のちがいです。価格が下がっても、売らないかぎり、その損はまだ見かけ上のもの=含み損にすぎません。ところが、慌てて売った瞬間、その含み損は、取り返せない本当の損に変わってしまいます。次の図で見てみましょう。

    図1 100万円が一時的に30%下がり70万円になった場面で、慌てて売った人は30万円の損が確定し、持ち続けた人は回復を待てば100万円へ戻れることを比べた図

    📖 用語狼狽売り(ろうばいうり)

    価格が下がったときに、怖くなって、慌てて売ってしまうことです。気持ちが先に動いてしまうのが特徴で、たいてい、一番下がったあたりで売ってしまう傾向にあります。その場で損が確定してしまうため、最も気をつけたい動きです。

    たとえば、100万円が一時的に70万円まで下がった時。怖くなって売れば、30万円の損が、その場で確定します。下げが、確定した損に変わってしまうのです。

    売らなければ、まだ損は確定してないんだ。

    そこが肝心です。慌てて売ると、見かけの損が、本物の損になってしまいます。

    持ち続けた人が、回復を待てた

    では、慌てて売らなかった人は、どうなったでしょうか。

    同じように100万円が70万円まで下がっても、売らずに持ち続けた人は、価格が回復するのを待つことができました。下落は、売らずにいれば通り過ぎていくこともあります。短く区切らず、長く持ち続けることを長期保有といいます。慌てない人ほど、この回復を待てる側に立ちやすいのです。

    📖 用語含み損

    価格が下がって、いま売ったら損になる状態のことです。ただし、まだ売っていない見かけ上の損で、確定はしていません。売らずに持ち続けて価格が戻れば、含み損も小さくなっていきます。売った瞬間に、はじめて本当の損になります。

    📖 用語長期保有

    短い期間で売り買いを繰り返すのではなく、長く持ち続けることです。下がった時に慌てて手放さず、回復を待つ余地を残せるのが強みです。前回の複利や時間分散とも、相性のよい考え方です。

    ただし、価格が必ず元に戻るとはかぎりません。回復までにかかる時間も、その時々でちがいます。それでも、慌てて売れば損は確定し、持ち続ければ回復を待つ余地が残る、という関係そのものは変わりません。

    売らなければ、回復を待つチャンスが残るんだね。

    そのとおりです。もちろん必ず戻るとはかぎりませんが、慌てて手放すより、ずっと前向きな選択です。

    長い目で見ると、波はならされていく

    一日一日の値動きを見ていると、上がった下がったで気持ちが揺れます。でも、長い目で見ると、景色が変わってきます。

    価格が上下する、その振れ幅をボラティリティといいます。短い期間ほど、この振れは大きく感じられます。けれど、長く持ち続けるほど、良い日と悪い日がならされて、でこぼこは落ち着いていきます。毎日チェックして一喜一憂するより、どっしり構えているほうが、結果的に慌てずにすみます。次の図のイメージです。

    図2 日々の価格は上下にジグザグと動くが、長く持ち続けるほど上下の波がならされていくことを示したイメージ図

    📖 用語ボラティリティ

    価格が上下に動く、その振れ幅の大きさのことです。振れが大きいほど、短い期間では気持ちが揺れやすくなります。ただし、長く持ち続けるほど、日々の上下はならされて感じにくくなっていきます。

    毎日見て、一喜一憂しないほうがいいんだね。

    はい。見すぎないことも、りっぱな作戦です。どっしり構えていきましょう。

    一番効くのは、何もしないこと

    ここまでをまとめると、下がった時に一番効くのは、じつは「何もしないこと」です。

    慌てて売らない。毎日見て一喜一憂しない。下がっても、通常運転だと受け止めて、どっしり持ち続ける。派手なテクニックよりも、この「動かない」という選択が、一番難しく、そして一番効くのです。

    すでにゼロワンをお持ちなら、まさにここが分かれ目です。下がった時に慌てて引き出すのではなく、通常運転だと受け止めて、長く持ち続ける。それが、時間を味方につける付き合い方になります。もちろん、将来の回復や成果を約束するものではありません。だからこそ、自分がどれくらいの値下がりまで慌てずにいられるか=リスク許容度を、あらかじめ知っておくことも大切です。

    📖 用語リスク許容度

    どれくらいの値下がりまでなら、慌てずに持っていられるかの度合いのことです。人によって、また使う予定によってもちがいます。これを先に知っておくと、下がった時に、慌てて動かずにすみやすくなります。

    下がった日の、心構えを一言で

    下がる日は、壊れた日ではなく、通常運転です。怖くなって売れば、損はその場で確定する。慌てず持ち続ければ、回復を待つ余地が残る。だから、一番効くのは「何もしないこと」。動きたくなる時ほど、ぐっとこらえる。それが、時間を味方につける人の、一番の強みです。

    下がっても慌てない。「何もしない」って、こんなに大事なんだ。

    そうです。動きたくなる時ほど、ぐっとこらえる。それが一番効きます。

    ゼロワンも、下がった時こそ、慌てず持ち続けることが大事なんだね。

    その心構えがあれば、もう大丈夫。下がる日も、怖い日ではなくなりますよ。

    よくある質問

    価格が下がったら、損切りしたほうがいいのですか?

    下落は珍しくない通常運転で、慌てて売ると、その時点で損が確定します。売らなければ含み損のままで、回復を待つ余地が残ります。ただし必ず回復するとはかぎらないため、自分がどこまで持ち続けられるかを、あらかじめ考えておくと安心です。

    含み損があると、もう負けですか?

    いいえ。含み損は、まだ売っていない見かけ上の損で、確定した損ではありません。慌てて売らなければ、価格が戻ったときに含み損も小さくなっていきます。売った瞬間に、はじめて本当の損になります。

    毎日、価格をチェックしたほうがいいですか?

    必ずしも必要ありません。短い期間の値動きは振れが大きく、見るほど不安になりがちです。長く持ち続けるなら、毎日見て一喜一憂するより、たまに確認するくらいのほうが、慌てずにすみます。

    ゼロワンが下がったら、どうすればいいですか?

    まずは、慌てないことです。下がるのは通常運転で、すぐ引き出すと損が確定します。すぐ使う予定のないお金であれば、通常運転だと受け止めて持ち続けることが、時間を味方につける付き合い方になります。これも将来の回復や成果を保証するものではないため、無理のない範囲で考えてください。

    理解度チェック

    Q1 価格が下がった日に、まずすべきことは何でしょう?

    Q2 「含み損」とは、どんな損でしょう?

    まとめ

    最初の3つの問い、ここで答え合わせです。

    1なぜ価格は、下がる日があるのか
    価格は上下しながら動くもので、下落は通常運転だからです
    2下がった時に売ると、何が起きるのか
    見かけ上の含み損が、取り返せない本当の損に確定します
    3持ち続けた人は、どうなったのか
    売らずに、価格が回復するのを待つことができました

    ポイント

    ✅ 下がる日は、壊れた日ではなく通常運転

    ✅ 慌てて売る=狼狽売りは、その場で損を確定させる

    ✅ 売らなければ含み損のままで、回復を待つ余地が残る

    ✅ 長く持ち続けるほど、上下の波はならされていく

    ✅ 一番効くのは、慌てて動かず「何もしない」こと

    ✅ 必ず回復するとはかぎらない。自分のリスク許容度を知っておく

    下がった時こそ、何もしないが正解なんだね。

    そうです。動きたくなる気持ちを、ぐっとこらえる。それが一番難しくて、一番効きます。

    ゼロワンも、下がっても慌てず持ち続けてみる。

    いい心構えです。下がる日を通常運転と受け止められたら、もう前より落ち着いていられますよ。

    なんだか、相場が下がるのが怖くなくなってきたよ。

    その感覚が、一番の収穫です。あせらず、どっしりいきましょう。

    学びの次の一歩:下がった日に、すぐ動かない

    今日からできるのは、下がった日にすぐ動かないことです。下落は通常運転だと受け止めて、慌てて売らない。毎日見て一喜一憂しない。すでにゼロワンをお持ちなら、下がった時こそ、慌てず長く持ち続ける。「何もしない」という選択ができたら、それが大きな一歩です。

    本記事は、価格の変動との向き合い方を理解するための教育目的でまとめたものです。特定の金融商品やサービス、取引を推奨するものではありません。記事中の金額や下落率の数値はすべて、考え方を説明するための例であり、ゼロワンの値動きや、将来の値動き、回復、実際の成果を示すものではありません。資産運用には価格の変動などにより損失が生じる場合があり、入れた資金を下回ることもあります。価格が必ず回復することや、将来の成果、損をしないことを保証するものではありません。実際の判断は、各種の最新の情報を確認したうえで、ご自身の責任でお願いします。

    この記事の用語
    • 狼狽売り ── 怖くなって、慌てて売ってしまうこと
    • 含み損 ── まだ売っていない、見かけ上の損。売らなければ確定しない
    • 長期保有 ── 短く区切らず、長く持ち続けること
    • ボラティリティ ── 価格が上下に動く、その振れ幅
    • リスク許容度 ── どれくらいの値下がりまで、慌てずにいられるか
    • 時間分散 ── 長い時間をかけて持つことで、上下の波をならすこと(前回STEP5の用語)

    参考資料