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投資を始めた多くの人が3か月でやめてしまう理由

📖 この記事の登場人物

朝陽

朝陽(あさひ)

お金を学び始めたばかりの大学生。「なんで?」と素朴な疑問をぶつける聞き手役です。

みのり先生

みのり先生

お金の教育に携わる解説役。難しい言葉も、本質をそのまま丁寧に噛み砕いて教えます。

前回までの話

前回は、増えない月があっても、それは仕組みが壊れたわけではなく、短い期間にたまたま出る運の波だと見てきました。月ごとの数字は上がり下がりしても、途中で投資をやめずに続けた人は、長く続けるほど結果が平均に近づいていく。そんな話でした。今日はその続きとして、多くの人がなぜ途中で投資をやめてしまうのかを見ていきます。

📖 前回の記事:お金が「勝手に育つ人」は、何をしているのか

先生、前回ので「続けることが大事」って分かったよ。でも…そもそも、みんなそんなに途中でやめちゃうものなの?

いいところに気づきましたね! 実は、投資を始めた人のうち、割と多くの人が数か月で投資をやめていくと言われています。今日は、その「やめてしまう理由」を見ていきましょう。

えっ、やめちゃうんだ…。やっぱり、下手な人がやめるってこと?

そう思いますよね。でも、違うんです。やめる人の多くは、負けたから投資をやめたのではありません。「減るのがこわい」という気持ちに押されて、自分から投資をやめているんですよ。

自分からやめる…? どういうこと? それ、知りたい!

今日は、次の3つの問いを順番に見ていきます。

  1. なぜ3か月でやめる人が多いのか ── 負けたからではなく自分からやめる
  2. やめる引き金は何なのか ── 焦りと取り返し
  3. 下がった月は、やめたほうがいい? ── 上下は運、やめるかは自己判断

「自分からやめる」の正体…! はい、お願いします!

多くの人は、自分からやめていく

まず、本当に多くの人がやめてしまうのか、ここから確かめましょう。

投資を始めた人のうち、最初の数か月で投資をやめてしまう人は、けっして少なくありません。ただ、ここで大事なのは、やめた人の多くが、大きく負けて続けられなくなったわけではない、という点です。

数字そのものより先に、数字を見た心が動きます。減った画面を見てため息をつき、だんだん口座を開く回数が減り、いつのまにか気持ちが離れている。負けて続けられなくなったのではなく、自分から静かに投資をやめている。これが、よくある姿です。

📖 用語短期売買

数日から数週間で、売ったり買ったりを短く繰り返すやり方です。短い期間の値動きは運の要素が大きいため、結果が安定しにくく、心が振り回されやすくなります。早く増やそうとするほどこの短期売買に近づき、やめる入口にもなりやすいのです。

えっ、負けたからじゃなくて、自分からやめてるの? なんでそんなことに…

そこなんです。やめたくなるのには、はっきりした引き金があります。次で、その正体を見てみましょう。

やめたくなる引き金は、焦りと取り返し

ここが今日の中心です。自分からやめてしまう、その引き金を見ていきます。

前回お話しした損失回避 ── 減るつらさを、増えるうれしさより強く感じてしまう心のくせ ── を覚えていますか。これが行動に出ると、焦りになります。減った数字を見ると、早く何とかしたい気持ちがわいてくるのです。

📖 用語含み損

まだ売っていない持ち分が、買った時より下がっている状態の、画面上の負けの数字です。確定した損ではありませんが、目に入るたびに心が重くなります。この含み損が、焦りの燃料になりやすいのです。

焦りが強くなると、人は「取り返したい」と動き出します。下がった分をすぐ埋めようと、いつもより大きく、いつもより急いで動いてしまう。これを取り返し売買と呼びます。ところが、急いだ判断はあたりにくく、かえって傷を広げることが少なくありません。

📖 用語取り返し売買

減った分をすぐ取り戻そうとして、ふだんより大きな金額や、急いだ判断で動いてしまうことです。冷静な時の判断とちがい、焦りが土台にあるため、さらに損を重ねやすいとされています。

たとえば、ふだんは月に1,000円ずつ積み立てている人が、減った数字を見て、その分を一気に取り戻そうと、その月だけ急に10,000円を入れてしまう。これが取り返し売買です。冷静なときの1,000円と違い、焦りに背中を押された10,000円なので、思いどおりにいかないと、より深く落ち込みやすくなります。

こうして焦りは、行動の引き金を引きます。減った数字を見て焦り、含み損が気になり、取り返そうと動く。その流れを、ひとつの図にまとめました。

図1 損失回避から始まり、含み損が気になり、口座を開かなくなり、気持ちが離れ、やめてしまうまでの流れを縦に並べた図

うわ、取り返したくて大きく動く…ぼくもゲームで負けたとき、やりがちだ。

誰にでもある動きなんですよ。焦りは悪者ではありません。ただ、焦ったまま動くと、損を広げやすい。だからこそ、焦りに気づくことが大事なんです。

数字の上下は「運」、やめる判断は「焦り」

ここで、いちばん大事な分かれ目を整理します。少しだけ、前回とつながる話です。

その月の数字が上がるか下がるかは、短い期間の運の波でした。これは自分では選べません。前回見たとおりです。でも、そこで投資をやめるか続けるかは、運ではありません。自分の心 ── 焦り ── が決めています。

数字の上下と、やめる判断。この二つは、いっしょに見えて、まったく別物です。上下は受け入れるしかないけれど、やめるかどうかは、自分で選べる。ここを分けて持てると、下げの月でも、あわてて投資をやめずにすみます。

📖 用語リスク許容度

自分がどれくらいの上下に、落ち着いていられるかの幅のことです。この幅を超える大きな金額で始めると、少しの下げでも焦りが暴れやすくなります。無理のない金額にしておくほど、心は落ち着いていられます。

焦りは誰にでもある。だから先に知っておく

焦りも、取り返したい気持ちも、特別なものではありません。誰の心にも起こります。大事なのは、なくすことではなく、先に知っておくことです。「これは焦りだ」と気づけるだけで、やめようとする手が、ふっと止まります。

なるほど…! 上下は運だけど、やめるかどうかはぼくが選べるんだ。そう思うと、ちょっと落ち着くかも。

その落ち着きが、いちばんの味方になりますよ。焦りに気づいて、ひと呼吸おく。それだけで、続けられる人にぐっと近づきます。

焦りは、気づいて備えておく

ここで、焦って投資をやめないための、二段構えのやり方をお話しします。

まず一歩目は、焦りに気づくことです。「あ、いま自分は焦っているな」と、自分の心の状態を自分で言葉にする。これは自分の気持ちを自覚することで、気づくと、その場の勢いは少し弱まります。ただし、これだけだと一時的で、また減った数字を見れば焦りは戻ってきます。

だから二歩目が大事です。焦ってからどうするかではなく、焦る前に決めておくのです。たとえば「下げても、決めた積立は続ける」と先にルールを決める。数字を見る回数を、毎日から週に1回に減らす。前回の話のように、買うのも待つのも仕組みに任せて、その場で判断しなくてよい形にしておく。こうしておくと、焦りが来ても、動かす余地そのものが小さくなります。

逆に、つらくて目をそらし、下がった持ち分を見ないことにする人もいます。これを塩漬けと言います。先に決めておくのと、見ないようにするのは、別のことです。決めておくのは続けるため、目をそらすのは向き合わないため。塩漬けは気持ちが離れる入口になりやすいので、気をつけてください。

📖 用語塩漬け

下がった持ち分を、見たくない気持ちから売りも見直しもせず、長く放置してしまうことです。焦って動きすぎるのと、向き合うのをやめてしまうのは、正反対のようでいて、どちらも焦りから生まれます。

図3 焦って動く人と、焦りをやり過ごした人の行動のちがいを左右に並べた対比図

なるほど、焦ってから我慢するんじゃなくて、焦る前に決めておくんだ。それなら、ぼくにも続けられそう。

そのとおりです! その場の気持ちに任せず、先に決めたルールと仕組みに任せる。気づくことと、先に決めておくこと。この二つがそろうと、下げの月でも、あわてて投資をやめずにすみますよ。

続けられたのは、焦りをやり過ごしたから

最後に、いちばん大事なことをお伝えします。

長く続けて結果を受け取った人は、特別な才能があったわけではありません。下げの月に、焦りはちゃんと来ています。ただ、その焦りをやり過ごしただけなんです。何か特別なことをしたのではなく、焦って投資をやめるのを、しなかった。それだけです。

仕組みに任せて待つ形なら、動き出しそのものは速くてかまいません。速さは速さで、期待してよいのです。ただ、月ごとの結果がならされて見えるには、焦りをやり過ごす時間が要ります。動き出しの速さと、ならされる時間は、別々に持っておくと安心です。

そっか…。すごい人だけが続けられるんじゃなくて、焦りをやり過ごした人が、続けられたんだ。

そのとおりです! あなたにもできます。焦りに気づいて、ひと呼吸おく。それを続けるだけで、下げの月は、こわくなくなりますよ。

よくある質問

減った数字を見ると、どうしても焦ってしまいます。どうすればよいですか?

焦りは誰にでも起こる自然な反応で、なくそうとしなくて大丈夫です。大切なのは「今、焦っているな」と気づくことです。気づいてひと呼吸おくと、急いだ判断を避けやすくなります。数字を見る回数を少し減らすのも、ひとつの方法です。

取り返したくて大きく動くのは、よくないのでしょうか?

取り返したい気持ち自体は自然ですが、焦ったまま大きく動くと、損を広げやすくなることが知られています。減った分をすぐ埋めようとせず、いつもの大きさ、いつものペースに戻すことが、結果として身を守りやすくなります。

やめたくなったときは、どう考えればよいですか?

その月の数字の上下は運の波で、自分では選べません。でも、やめるか続けるかは自分で選べます。下げを見てやめたくなったときほど、この二つを分けて、いま動かしているのは焦りではないかと、一度立ち止まってみてください。

理解度チェック

Q1 投資を3か月でやめる人が多い、いちばんの理由に近いのはどれでしょう?

Q2 「その月の数字の上下」と「やめるか続けるか」の関係で、正しいのはどれでしょう?

まとめ

最初の3つの問い、ここで答え合わせです。

1なぜ3か月でやめる人が多いのか
負けたからではなく、焦りに押されて自分から投資をやめているからです
2やめる引き金は何なのか
損失回避から生まれる焦りと、取り返したい気持ちです
3下がった月は、やめたほうがいい?
数字の上下は運で選べない。やめる判断は焦りで、自分で選べます

ポイント

✅ 投資を数か月でやめる人は多い。その多くは、負けたからではなく自分からやめている

✅ やめたくなる引き金は、減るのをこわがる焦りと、取り返したい気持ち

✅ 焦って大きく動く取り返し売買は、かえって損を広げやすい

✅ その月の数字の上下は運。やめるか続けるかは、自分の心が決める

✅ 焦りに気づくのは一歩目。根本は、焦る前にルールを決めておくこと

✅ 続けた人は特別ではない。焦りをやり過ごし、決めたことを続けただけ

そっか、ぼくが「やめたい」って思ってたの、あれ負けたからじゃなくて、焦ってただけなんだ。

よく気づきましたね! 負けたのではなく、焦りが背中を押していただけ。気づけば、ひと呼吸おけますよ。

上下は運、やめるかはぼく次第。焦る前に「続ける」と決めておく。これならできそう!

完璧です! それを続けるだけで、下げの月もこわくなくなります。焦りをやり過ごせた人が、あわてず続けられているんですよ。

学びの次の一歩:やめたくなったら、ひと呼吸

今日からできるのは、何かを増やすことではありません。下げを見て「やめたい」と思ったとき、一度だけ立ち止まって「いま動かしているのは焦りかな」と自分に聞いてみることです。その月の上下は運の波、やめるかどうかは自分の心。二つを分けて思い出すだけで、急いだ手が止まります。

本記事は、お金との向き合い方や心のはたらきを理解するための教育目的でまとめたものです。特定の金融商品やサービス、取引を推奨するものではありません。資産運用には価格の変動などにより損失が生じる場合があり、入れた資金を下回ることもあります。記事中の表現はすべて一般的な考え方の説明であり、将来の成果や、損をしないことを保証するものではありません。実際の判断は、各種の最新の情報を確認したうえで、ご自身の責任でお願いします。

この記事の用語
  • 短期売買 ── 数日から数週間で売り買いを短く繰り返すやり方。運に振り回されやすい
  • 含み損 ── まだ売っていない持ち分の、画面上の負けの数字
  • 取り返し売買 ── 減った分をすぐ取り戻そうと、急いで大きく動くこと
  • 塩漬け ── 下がった持ち分を、見たくなくて放置すること
  • リスク許容度 ── どれくらいの上下に落ち着いていられるかの幅

参考資料